教員インタビュー
小宮 正安

海外研究スタジオ

「都市」を通して対象を捉える

先生の研究内容は何ですか?

小宮  「ヨーロッパ文化史」ですね。「文化」は人間が生み出すもので、人間の生き方は人間がつくっていくものだと考えていますし、そのような一つの“型”は、時代や地域で全然違います。「文化史」とは、人間の生き方を何かのフィルターを通して見ていく学問です。
 ちなみに歴史というのは、中学校や高校の授業では、政治・文化・経済などのように分かれていますけれど、本当は、全部つながっています。「なぜこのような人が出てきたのか」「なぜその作品が生まれてきたのか」「なぜこのような建物ができたのか」。そういったことを当時の文脈で再構成し、今日の社会にどのようなヒントを与えているのかを考えることが僕の研究ですね。
 また、なぜヨーロッパかと言うと、大学時代からウィーンに非常に興味があったんです。(潜在的には中学生の頃からかもしれないけど…。)僕は最初、日本のガイドブックに騙されて「ウィーンは音楽の都」だと思っていましたし、もちろんそういう風な面は今でもウィーンは強いのだけれども、実際にウィーンを訪れると全然違っていました。
 まず、ドイツ系の他に、トルコ系やルーマニア系、ポーランド系やチェコ系な色んな人がいます。「多種多様な民族が住む街で育まれる芸術や文化って何だろうな」ということをたくさん考えました。だから逆に言うと、僕が「ヨーロッパ文化史」という抽象的な看板を掲げていられるのも、ある意味オーストリアやウィーンとの出会いがあったからでしょう。

何がきっかけでウィーンに興味を持たれたのですか?

小宮  僕は母がピアノの先生で、幼い頃からピアノを習っていました。中学生になり反抗期もやってくると、青春の鬱々もあり、母と喧嘩してピアノを弾くこともやめてしまいました。でも音楽は好きだったので、パンクロックのドラムに興味を持ち、学校でブラスバンドに入り、ドラムとパーカッションをやっていました。
  ある日、顧問の先生に「夏休みにどんなジャンルでも良いから演奏会に行って、感動できるものに出会って来い」と言われ、僕はきちんとその言いつけを守り、学生券1000円のとても安い「千人の交響曲」(「マーラー作曲」と書かれていた)という演奏会に行きました。ステージ上に1000人くらいの出演者が登場したインパクト、しかも音楽聴いた瞬間、「この世にはパンクロックを超える音楽が存在したんだ」と思いました。それでまた、パンクロックからクラシックに戻ったというわけです。
 マーラーの曲を聴くようになり、段々クリムトとかウィーンの世紀末のことも知るようになり、「ウィーンって面白そうな街だな」と思い始めました。日本で「ウィーンは音楽の都」と言われていて、何となくその文言に騙されてきましたが、実は音楽文化を形作っている周囲にあるもの、例えば美術や建築や文学もとても面白いのですよね。それがこの世界に足を踏み入れた始まりです。
 ウィーンを初めて訪れたのは大学院になってからです。大学生の頃のある出会いがターニングポイントとなりました。大学では社会学をやっていて、芸術社会学、つまり、色んな社会のメカニズムの中で芸術家の活動の仕方や彼らの作品がどのように社会を反映しているかを学びたいと思っていた頃、ドイツ文学科で教鞭を執られていた、ウィーン研究専門の池内紀(おさむ)先生に出会いました。
 彼は文学者だけれど心理学や美術、音楽の話もできる非常に間口の広い人でした。「自分がやりたいのは、一つのものを通して街や文化が育んできたもっと広い部分を見ることだ。この人についていきたい」と思い、大学院に進学する決意をしました。当時僕はドイツ語が全く話せなくて、先生からウィーン研究にドイツ語は必須だと諭され、大学院に入学して間もなく、日本人のいないドイツのマインツに半年間以上武者修行に行ってきました。

先生のスタジオでは、どのようなことを学べますか?

小宮タブーはないです。例えばトイレの文化史とか書いている人もいました。皆の興味のあるところからやっていくのが大事です。
 ただしその一つとして、「都市」は研究対象を捉えるのにきわめて優れたアプローチ方法だろ思います。なぜなら、都市には人間がいるからです。人間の縮図という観点から言うと、「都市」は文化の営みそのものです。
 このようなフレームを通して、自分の興味のあるものを見つけていったら良いと思います。顕微鏡に例えると、覗くレンズが「都市」というレンズで、やりたいことをそのレンズを通して見てみるといった感じかな?レンズには色んなレンズがあり、どのレンズもきわめて大きな可能性を秘めたレンズです。またそうした作業を経て興味のあるものを覗いたとき、今まで見えていなかったものが見えてくるのではないでしょうか。

その興味はどうやって見つけるんですか?

小宮日頃から「え、何でだろう?」と思うことが大切ですね。幼い頃は誰もが思っていることです。
  でも、日本の場合は空気を読むという傾向があって…建前としては思想統制もない国なのに…、積極的に質問することが憚られがちです。だから6才~18才までそういった環境に身を置いてきた人がそこから抜け出すのは中々大変なのですが、良いことであれ悪いことであれ、「どうして?」という気づきをたくさん持つことが重要になってくると思います。特に、「Why」と「How」は大切です。

大学で何をしたいか分からない人に助けとなるメッセージをお願いします。

小宮自分が興味を持つものは何かしらあるから、そこからどうやって糸を引いてきて、別のものと結び合わせていくかというのが大切な気がします。特に文化史みたいなある種のニュージャンルを研究していると、「つなぐ力」ってとても大事だと思います。
 もちろん、自分で一つの、しかも新しいものをつくっていくことは学生にとっても教員にとっても大変な作業です。でも、前人未踏なテーマを追い求めることは学問にとって大事なことで、楽しいことです。だからやっぱり自分の興味のあるところから自分でどこまで糸を引っ張り出せるか、またその糸をどこに持っていったら良いのかを手助けしてくれる導き手となる教員を見つけることが大事な気がします。

都市社会共生学科を目指す学生に一言お願いします。

小宮(話の流れから5・7・5・7・7でお願いすることになりました。)
小宮先生:何事か 不思議に思い その答え 探してみよう この横浜で
先生からの無茶ぶりで私たちも詠ませていただきました。
スタジオ生H:その疑問 どんどん深く 掘り下げて 新たな発見 広がる世界
スタジオ生K:浜の地で 小さなはてな(?) びっくりに(!) 学びの中で 夢探し

インタビュー:2019年5月